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院長コラム

立ちくらみの原因(男性、女性)、対処方法

循環器疾患  / 生活習慣病

立ちくらみについて

立ちくらみとは

立ちくらみは、急に立ち上がったときや長時間立った後に、視界が暗くなったりふらついたりする症状です。これは姿勢の変化などによって脳への血流が一時的に低下することで起こります。水分不足、疲労、栄養の偏りなどがあると起こりやすく、「意識が遠のくような感覚」や「その場に座り込みたくなる」こともありますが、通常は数秒で回復します。医学的には「前失神」とも呼ばれ、脳の血流が一時的に不足し意識を失いかける状態を指します。実際に意識を失った場合は「失神」と診断されます。立ちくらみが頻繁に起こる、意識を失う、倒れるなどの症状がある場合は、背景に疾患が隠れている可能性もあるため、早めに医療機関を受診することが重要です。

めまいと立ちくらみの違い

「めまい」と「立ちくらみ」は混同されやすい症状ですが、めまいは主に内耳や脳など平衡感覚の異常によって起こり、景色が回っているような感覚やふらつき(浮動感)を伴うことが特徴です。一方で、立ちくらみは血流不足による意識の遠のき感が中心であり、原因や対処法が異なるため注意が必要です。

立ちくらみの症状

 

  • 頭がふわっとする、クラッとする
  • 視界が急に暗くなる(ブラックアウト)
  • 意識がぼんやりする、気を失いそうになる
  • 動悸
  • 冷や汗
  • 視界がかすむ
  • 顔色が青白くなる
  • 吐き気

など

立ちくらみの種類

立ちくらみは、脳への血流が一時的に不足することで起こる症状ですが、その発生メカニズムによって大きく次の3つのタイプに分類されます。

起立性低血圧

起立性低血圧とは、座ったり寝たりした状態から立ち上がったときに、目の前が暗くなる・ふらつくなどの症状が出る状態です。立ち上がることで、重力により下半身に血液がたまり、心臓に戻る血液量が減少し、一時的に血圧が下がるために起こります。通常は自律神経などが働いて血圧がすぐに回復しますが、調節機能に異常があったり、脱水や出血で血液量が不足している場合は、血圧がうまく保てず症状が現れます。

神経調節性失神

神経調節性失神とは、自律神経の反射に異常が生じることで、血圧や心拍数の調整がうまくいかなくなり、一時的に意識を失う状態です。「反射性失神」とも呼ばれ、さまざまな刺激が引き金となって起こるのが特徴です。神経調節性失神は、原因や発生のメカニズムに応じて、次の3つのタイプに分類されます。

血管迷走神経失神(血管迷走神経反射)

血管迷走神経失神(血管迷走神経反射)とは、痛み刺激や過度の疲労、精神的なストレスなどをきっかけとして起こる一過性の循環調節障害です。たとえば、「朝礼などで長時間立っていて急に倒れてしまう」「採血や注射の際に気分が悪くなる、目の前が暗くなる」といった場面で見られることがあります。体動時には発生しにくく、立位や座位中をずっと維持している時に発生します。この反応は、交感神経の抑制による血管拡張と、迷走神経の緊張による心拍数低下の結果、脳への血流が一時的に不足して生じます。その結果、めまいや立ちくらみ、冷や汗、吐き気などの症状があらわれ、失神してしまう場合もあります。失神の持続時間は比較的短く1分以内に改善することが多いです。

頸動脈洞過敏性失神(頸動脈洞症候群)

頸動脈洞過敏性失神(頸動脈洞症候群)とは、首の左右にある「頸動脈洞(けいどうみゃくどう)」という血圧を感知するセンサーが過敏になり、わずかな刺激に対して過剰な反応を示すことで生じる失神のことを指します。頸動脈洞は、体内の血圧を一定に保つ働きを担っていますが、加齢や動脈硬化などによりこの部分が敏感になると、たとえば首をひねる・伸ばす動作や、ネクタイ・シャツのボタンでの圧迫などにより反射的に心拍数が低下し、血圧も急激に下がることがあります。その結果、脳への血流が一時的に減少し、失神する場合があります。とくに中高年の男性に多く見られるタイプの反射性失神の一つであり、日常の動作がきっかけになる点が特徴です。頻繁に同様の症状が起こる場合には、循環器内科などでの評価が必要です。高血圧や冠動脈疾患などの動脈硬化性疾患と合併していることが多いです。

状況失神

状況失神とは、特定の動作や状況がきっかけとなって、一時的に意識を失う状態を指します。たとえば、排尿や排便をしている最中やその直後、激しい咳をしたときなどに起こることがあります。これらの場面では、迷走神経の活動により心拍数が低下し、副交感神経が優位となり血圧が低下して、脳への血流が一時的に減少することで失神を起こすと考えられています。状況によって誘因となる体の動きや内臓への刺激は異なりますが、いずれも神経反射の過剰な反応が関係している点が共通しています。血管迷走神経失神は若年者に多いですが、状況失神は高齢者に多く認められます。

心原性失神

心原性失神とは、心臓に由来する異常が原因となって起こる失神のことを指します。発生頻度は全体の10%未満とされ、他のタイプと比べると少数ですが、生命に関わる危険性が高いため、特に注意が必要な失神の一つです。原因としては、心室細動や完全房室ブロックといった重篤な不整脈(頻脈性不整脈や徐脈性不整脈)のほか、心筋梗塞、肥大型心筋症、大動脈弁狭窄症などの器質的な心疾患が挙げられます。この種類の失神は、予兆がほとんどなく突然意識を失って倒れるといった特徴があり、速やかな診断と治療が極めて重要です。失神を繰り返している方や、安静時・運動時に突然倒れたことがある方、また家族に心疾患の既往がある場合には、早めに循環器内科など専門医による診察を受けることが推奨されます。

心原性失神

心原性失神とは、心臓に由来する異常が原因となって起こる失神のことを指します。発生頻度は全体の10%未満とされ、他のタイプと比べると少数ですが、生命に関わる危険性が高いため、特に注意が必要な失神の一つです。原因としては、心室細動や完全房室ブロックといった重篤な不整脈(頻脈性不整脈や徐脈性不整脈)のほか、心筋梗塞、肥大型心筋症、大動脈弁狭窄症などの器質的な心疾患が挙げられます。この種類の失神は、予兆がほとんどなく突然意識を失って倒れるといった特徴があり、速やかな診断と治療が極めて重要です。失神を繰り返している方や、安静時・運動時に突然倒れたことがある方、また家族に心疾患の既往がある場合には、早めに循環器内科など専門医による診察を受けることが推奨されます。

男女別の立ちくらみの特徴

男性に特徴的な立ちくらみ

消化管出血による貧血

男性に多い立ちくらみの原因として、消化管からの出血による貧血が挙げられます。たとえば胃潰瘍や大腸ポリープ、大腸がんなどの疾患により、腸管内で出血が続くと体内の鉄分やヘモグロビンが徐々に失われ、貧血が進行することがあります。血液が十分に酸素を運べなくなると、脳への酸素供給が不足し、ふらつきや立ちくらみを感じやすくなります。とくに男性では、月経による鉄分の喪失がない分、こうした消化管出血に気づきにくい傾向があります。黒い便(タール便)や血が混じる便が続くようであれば、これは消化管からの出血の兆候である可能性があるため、放置せずに早めに消化器内科での診察を受けることが勧められます。

頸動脈洞過敏性失神(頸動脈洞症候群)

男性にみられる特徴的な立ちくらみの原因のひとつに「頸動脈洞過敏性失神(頸動脈洞症候群)」があります。このタイプの失神はとくに中高年の男性で多くみられ、首まわりへの刺激がきっかけになることがあります。たとえば、ネクタイを強く締める動作や重い物を持ち上げる動き(首の伸展)、首をねじるような姿勢の変化などによって、頸部にある血圧調整機構(頸動脈洞)が過敏に反応し、反射的に血圧や心拍数が急激に下がります。その結果、脳への血流が一時的に減少し、立ちくらみや一過性の失神を引き起こすことがあります。このような失神は突然起こることが多く、転倒などのリスクもあるため、症状に心あたりがある方は循環器内科での評価を受けることが重要です。

降圧薬による起立性低血圧

高血圧の治療を受けている男性では、降圧薬の影響で起立性低血圧を起こすことがあります。起立性低血圧とは、横になった状態から急に立ち上がった際などに血圧が十分に保てず、一時的に脳への血流が低下してふらつきや立ちくらみが生じる状態です。とくに朝の起床時や椅子から立ち上がる瞬間に症状が出やすい傾向があります。降圧薬の作用により血圧が下がりすぎることで、自律的な血圧調整が追いつかずに起立性低血圧が現れることがあるため、注意が必要です。こうした症状が頻繁にある場合は、薬の種類や服用タイミングの調整が必要なこともあるため、自己判断せず医師に相談することが重要です。

女性に特徴的な立ちくらみ

月経に伴う鉄欠乏性貧血

女性にみられる立ちくらみの原因として、月経に伴う鉄欠乏性貧血が挙げられます。月経のある女性では、定期的な出血によって体内の鉄が消耗されやすくなります。この結果、赤血球の主成分であるヘモグロビンの合成が不十分になり、血液中の酸素運搬能力が低下します。脳へ運ばれる酸素が一時的に不足することで、ふらつきや立ちくらみなどの症状が現れることがあります。とくに月経量が多い方や食生活で鉄分が不足しがちな方は、鉄欠乏性貧血を起こすリスクが高まります。立ちくらみの症状が続く場合には、血液検査などで貧血の有無を確認し、必要に応じて鉄分補給や食生活の見直しを行うことが重要です。

神経調節性失神

思春期から若年の女性では、「神経調節性失神(血管迷走神経反射)」と呼ばれるタイプの失神が比較的よく見られます。このタイプの失神は、不眠・ストレスなどの精神的な緊張や痛み刺激、または長時間立ち続けるといった状況によって引き起こされることがあります。これらの刺激が自律神経に影響を与え、一時的に血圧や心拍数が急激に低下することで、脳への血流が減少し、立ちくらみや失神といった症状が生じます。特に女性は、自律神経の働きがホルモン変動の影響を受けやすいこともあり、この反応が起こりやすいとされています。こうした立ちくらみは、体調の変化だけでなく日常のストレスなどとも関係している場合があるため、繰り返すようであれば医療機関の受診が勧められます。

ホルモンバランスの変化

女性に特有の体調変化として、ホルモンの分泌が大きく変わる時期には立ちくらみが起こりやすくなることがあります。たとえば、妊娠初期や月経前の時期、更年期に差しかかる頃などは、体内のホルモンバランスが急激に変動することで、自律神経の働きが乱れやすくなります。自律神経がうまく調整できなくなると、血圧や脈拍のコントロールが不安定になり、その結果、立ちくらみやふらつきを感じることがあります。このような変化は一時的なものであることも多いですが、症状が続いたり、日常生活に支障が出るような場合には、婦人科などでの相談を検討するとよいでしょう。

疾患以外が原因の立ちくらみ

1.5.1. 脱水・発汗

脱水や大量の汗をかくことは、立ちくらみの原因となります。水分や塩分が不足すると血液量が減り、脳への血流が一時的に低下するためです。運動後や暑い環境では特に注意が必要で、冷房の効いた室内でも知らぬ間に脱水になることがあります。立ちくらみを防ぐには、のどが渇く前からこまめに水分と適度な塩分を補給することが重要です。

栄養不足・ダイエット

過度なダイエットや栄養バランスの乱れは、立ちくらみを引き起こす一因となります。体に必要な鉄分やエネルギーが不足すると、鉄欠乏性貧血や低血糖を生じやすくなり、その結果、脳への血流が一時的に減少することがあります。とくに成長期の方や女性は影響を受けやすいため、注意が必要です。また、朝食を抜いたり食事の回数が少ない生活も、立ちくらみやふらつきのリスクを高める要因となります。こうした症状が継続する場合には、日常の食習慣を見直すことが予防や改善につながります。

疲労・睡眠不足

疲れがたまっていたり、睡眠不足が続いたりすると、自律神経が乱れ、血圧や脈拍の調整がうまくいかなくなり、立ちくらみを引き起こすことがあります。また、ストレスや心身の疲労が重なると、集中力の低下やめまいも起こりやすくなります。立ちくらみを防ぐには、質の良い睡眠と定期的な休息をとり、心身のバランスを整えることが重要です。無理をせず、体のサインを見逃さないようにしましょう。

精神的なストレス

強いストレスや不安を感じているとき、自律神経の働きが乱れ、血圧の調整がうまくいかなくなり、立ちくらみを起こすことがあります。とくに緊張状態が続くと、「ふらつき」「息苦しさ」「意識が遠のく感じ」などの症状が同時に現れることもあります。ストレスによる睡眠不足や食欲不振も重なると、症状が悪化することがあります。体調がすぐれず原因がはっきりしないときは、心の状態にも目を向け、必要に応じて医療機関に相談することが重要です。

過度な運動

運動中や運動直後に立ちくらみが起こることがあります。これは、筋肉に集中していた血流が急に戻らず、脳への血流が一時的に減ることで起こる「運動後低血圧」が原因です。また、汗による水分や塩分の喪失で脱水状態になると、血圧の調整がうまくいかず、立ちくらみが起こりやすくなります。高温下での激しい運動では特に注意が必要です。症状が出たときは無理をせず、座る・横になる・水分をとるなどの対応を行いましょう。繰り返す場合は、医療機関の受診をおすすめします。

立ちくらみの対処方法

立ちくらみを感じたときは、無理をせず、まずは安全な姿勢をとることが重要です。とくに、急に立ち上がったときや長時間立っていた後にふらつきを感じた場合は、次のような対応を心がけましょう。

1.6.1. その場で座る・横になる

転倒を防ぐために、その場で椅子や床に座り込むことが重要です。また、可能であれば仰向けになって足を少し高く上げることで、脳への血流が改善しやすくなります。

深呼吸をする

ゆったりとした深呼吸を行うことで、自律神経のバランスを整える効果が期待できます。鼻から息を吸い、口からゆっくり吐き出す呼吸を意識しましょう。

水分・塩分を補給する

脱水や血圧の低下が原因で立ちくらみが起きている場合には、水や経口補水液、スポーツドリンクなどを少しずつ摂取することが有効です。

立ちくらみの予防方法

適度な運動

立ちくらみの予防策として、日常生活に無理のない範囲で運動を取り入れることが勧められています。適度な運動は血液の循環を助け、特にウォーキングや軽いスクワットなど下半身を使う動きは、足にたまりやすい血液を心臓へと戻しやすくし、立ち上がったときの急激な血圧低下を防ぐ効果が期待されます。こうした運動習慣は、起立性低血圧の予防や改善にもつながるとされており、立ちくらみを繰り返す方にとっては有効な対処法のひとつです。

生活習慣の改善

立ちくらみを予防するには、日常の生活習慣を整えることが基本になります。たとえば、質のよい睡眠を十分にとることや、栄養バランスのとれた食事を心がけることが重要です。生活のリズムが安定すると、自律神経の働きが整いやすくなり、身体全体のコンディションが向上します。結果として、立ちくらみが起こりにくい体調管理にもつながると考えられています。

立ち上がる動作はゆっくり行う

朝目覚めたときや長時間座った後に立ち上がる際は、勢いよく動かず、数秒かけてゆっくりと動作を行うことが重要です。急に立ち上がると血圧が一時的に下がりやすく、立ちくらみの原因となるため注意が必要です。また、横になっている場合や座っている状態から起き上がる際には、すぐに体を起こすのではなく、まず足の指や足首を軽く動かして体を刺激してから、ゆっくりと立ち上がるようにしましょう。こうしたちょっとした工夫が、起立時の血圧変動を抑え、立ちくらみの予防に役立ちます。

立ちくらみの原因となる疾患

貧血

立ちくらみの原因としてよく見られるのが貧血です。貧血になると血液中のヘモグロビンが減少し、脳への酸素供給が不足することで、ふらつきやめまいが起こりやすくなります。原因には、消化管出血による鉄分の慢性的な喪失(胃潰瘍・大腸ポリープなど)や、月経過多(子宮筋腫など)による鉄不足、さらに腎疾患によるホルモン分泌の低下(腎性貧血)などがあります。貧血はゆっくり進行することが多く、気づかないうちに悪化することもあります。立ちくらみに加え、倦怠感や息切れ、顔色の悪さがある場合は、血液検査で原因を調べることが重要です。

自律神経失調症

立ちくらみの原因として、「自律神経失調症」が関係していることがあります。これは、体の働きを調整する自律神経のバランスが乱れ、血圧や心拍数の調整がうまくいかなくなる状態です。その結果、立ち上がったときに脳への血流が一時的に減り、ふらつきやめまいが生じやすくなります。ストレスや生活リズムの乱れが主な要因とされ、頭痛や動悸、息切れ、不眠などの症状を伴うこともあります。

不整脈

立ちくらみの要因として、心拍のリズム異常である不整脈が関わっていることがあります。不整脈とは、脈が速くなったり遅くなったり、あるいは不規則に打つ状態のことで、心臓の血液を送る働きが十分に保てず、一時的に脳への血流が不足してめまいや失神を引き起こす場合があります。不整脈には種類が多く、なかには命に関わるリスクのあるものもあります。立ちくらみが頻繁に起きる、または動悸や胸の圧迫感などを伴うときは、早めに循環器内科を受診し、心電図などで心臓の状態を確認することが重要です。

心不全

立ちくらみの原因として、心臓の血液を送る力が低下する「心不全」が関係していることがあります。心不全では心臓のポンプ機能が弱まり、立ち上がった際などに脳への血流が不足してふらつきやめまいが起こることがあります。原因には心筋梗塞や肥大型心筋症、大動脈弁狭窄症などがあり、いずれも血液の流れを妨げることで症状を引き起こします。特に高齢の方では、体位の変化や運動時に立ちくらみや失神が現れることもあります。動悸や息切れを伴う場合は、早めに循環器内科を受診し、心電図や心エコー検査で原因を調べることが重要です。

パーキンソン病

立ちくらみの原因のひとつに「パーキンソン病」があります。これは、脳内のドーパミン不足によって手足のふるえや動作の鈍さが起こる進行性の神経疾患です。自律神経も影響を受けるため、血圧の調整が乱れ、起立性低血圧によって立ち上がった際にふらつきや立ちくらみが生じやすくなります。特に高齢の方では、転倒や骨折のリスクもあるため注意が必要です。治療には薬物療法のほか、生活習慣の見直しやリハビリも重要です。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンが不足して代謝が低下し、さまざまな不調が現れる疾患です。心拍の低下や血圧の下がりやすさが影響し、脳への血流が減って立ちくらみを起こすことがあります。倦怠感や手足の冷え、むくみ、便秘、気分の落ち込みなどもあわせてみられる場合は、この疾患が関係している可能性があります。

副腎不全

副腎不全とは、副腎という臓器から分泌されるホルモンが不足することで、体のさまざまな機能に支障をきたす疾患です。副腎ホルモンには、血圧を保つ「アルドステロン」やストレスに対応する「コルチゾール」などがあり、これらが不足すると血圧がうまく調整できなくなります。その結果、血圧の低下を起こしやすくなり、座った状態や横になった姿勢から立ち上がったときに、脳への血流が一時的に減って立ちくらみやめまいが生じることがあります。副腎不全ではこのほかにも、だるさ、体重減少、吐き気、低血糖、皮膚の色素沈着(アジソン病の場合)などの症状が見られることがあります。原因としては、自己免疫による副腎の障害や、ステロイド薬の急な中止などが挙げられます。放置すると重篤な状態に陥ることもあるため、立ちくらみが続く場合や上記のような症状が重なる場合は、内科や内分泌代謝科を受診し、早めに検査・治療を受けることが重要です。

立ちくらみの検査

立ちくらみの原因を調べるために、まず心電図や血液検査を行います。必要に応じて、診察時の所見から心臓や神経の異常が疑われる場合には、追加の検査を検討します。薬の影響が考えられる場合は、医師が一時的に中止を指示し、症状の変化から原因を確認します。自律神経の不調が疑われる場合には、「ティルト試験(傾斜試験)」が行われることもあります。これは体を傾けながら血圧や脈拍を測定する検査です。当院では実施していないため、必要に応じて専門医療機関をご紹介します。

立ちくらみの治療

立ちくらみの治療では、まず原因に応じた対応を行います。薬剤が関係している場合は、医師の判断で中止や変更が検討されます。ただし、すべての原因を取り除けるわけではないため、多くは症状を緩和する対処が中心となります。基本的な対策として、生活習慣の改善が重要です。急に立ち上がらずゆっくり動く、水分をしっかりとる、アルコールを控える、定期的な軽い運動を行うといった工夫が効果的です。ベッド上でできる運動や、就寝時に枕を高くすることも予防に役立ちます。また、塩分摂取量の増加が有効な場合もありますが、心疾患がある方には適さないことがあるため、医師の指示に従う必要があります。症状の程度や背景に応じて、適切な方法を選ぶことが重要です。

よくある質問

貧血があると立ちくらみが起きやすいのはなぜ?

立ちくらみは、脳への血流や酸素の供給が一時的に減ることで起こる症状です。貧血では、赤血球やヘモグロビンの減少により酸素を運ぶ能力が低下し、結果として脳への酸素供給が不足しやすくなります。特に鉄分不足が原因の「鉄欠乏性貧血」はよく見られ、月経がある女性や、消化管出血がある男性に多い傾向があるため、性別にかかわらず注意が必要です。

立ちくらみはどうして起こるの?

立ちくらみは、姿勢を変えたときなどに脳への血流が一時的に減ることが原因で生じます。主な要因には「起立性低血圧」や「神経調節性失神」、「心原性失神(心臓に原因がある失神)」などがあります。また、貧血、脱水、栄養不足、強い疲労や精神的なストレスなども関係します。立ちくらみが何度も続く場合は、医療機関で詳しく調べてもらうことが重要です。

立ちくらみのとき、体に足りていないものは何?

立ちくらみの背景には、鉄分、水分、エネルギー源(糖分など)の不足が関わっている場合があります。鉄分が不足すると貧血になり、脳への酸素の供給が不十分になります。また、水分や塩分が足りないと血液量が減り、血圧が下がって脳への血流が減少することがあります。栄養バランスの整った食事と、こまめな水分補給が予防の基本です。

立ちくらみは、病院を受診した方がいい?

一時的で軽い立ちくらみであれば、生活習慣の見直しで改善できる場合もあります。しかし、繰り返し起こる、意識を失ったことがある、転倒した経験がある、動悸や息切れ・吐き気などを伴う場合は、何らかの疾患が関係している可能性があります。心臓や自律神経に原因があることもあるため、早めに内科や循環器内科を受診して、必要な検査を受けるようにしましょう。

立ち上がったときにクラッとするのはなぜ?

急に立ち上がったときに一瞬「ふらっ」とするのは、「起立性低血圧」と呼ばれる状態が関係している可能性があります。この状態は、体勢の変化により一時的に血圧が下がり、脳に送られる血液が減ることで起こります。長時間同じ姿勢でいたり、水分が不足していたり、疲れがたまっていると起こりやすく、健康な方でも一時的に感じることがあります。とはいえ、繰り返す場合や倒れるほど強い症状があるときは、受診することをおすすめします。