喉の違和感(詰まった感じ)
喉に感じる違和感とは
喉の違和感とは、喉の奥に何かが詰まっているような感覚や、引っかかっているような感覚など、異物があるように感じる状態を指します。このような症状がある場合、喉の粘膜に炎症が起きている可能性があります。喉の粘膜に炎症を引き起こす代表的な疾患には、咽頭炎、扁桃炎、喉頭炎などがあります。また、逆流性食道炎のように、喉ではなく食道に原因がある場合でも、喉に違和感が生じることがあります。さらに、検査で明らかな異常が見つからないにもかかわらず、喉の異物感が続く場合には、「咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)」という疾患が疑われます。この疾患は、腫れや炎症などの明確な異常がないにもかかわらず、喉に違和感を覚える状態であり、ストレスや自律神経の乱れが関与していると考えられています。体に目立った異常がないのに不快な症状が続くのが特徴で、このような場合でも、早めに適切な診断と対処を受けることが重要です。加えて、頻度は高くありませんが、咽頭がん・喉頭がん・食道がんなどの初期症状として喉の違和感が現れることもあります。痛みなどの強い症状がない場合には、単なる体調不良と考えて放置されがちですが、症状が数週間以上続く場合は、早めに内科や耳鼻咽喉科を受診し、原因を調べることをおすすめします。
喉の違和感の原因となる疾患
逆流性食道炎
逆流性食道炎(GERD)とは、胃の中の酸(胃酸)が食道へ逆流することで、食道の粘膜が傷つき、炎症を起こす疾患です。主な症状としては、胸のあたりが焼けるように感じる「胸やけ」がよく知られています。しかし、胃酸の逆流が強くなると、食道を越えて喉のあたりまで達することがあり、この場合には喉に違和感を覚えたり、口の中が苦くなったり酸っぱく感じたりすることもあります。さらに、胃酸によって歯の表面が溶けやすくなり、虫歯が増えることもあるとされています。このように胃酸が咽頭や喉頭まで到達し、喉の不快感や咳、声のかすれ、口の苦みなどを引き起こす状態は、「咽喉頭逆流症(LPRD)」と呼ばれます。逆流性食道炎とは症状の現れ方や影響を受ける部位が異なり、LPRDでは胸やけを伴わないことも多いため、主に喉の症状として現れることが特徴です。喉の不快感や口の苦みが続いている場合、胃酸が喉の近くまで逆流してきて粘膜に影響を及ぼしている可能性があります。そのため、これらの症状がみられる方は、早めに内科を受診し、必要に応じて胃カメラ検査などで原因を確認することをおすすめします。
喉の疾患
喉の違和感の原因が甲状腺・内分泌疾患、耳鼻咽喉科の専門検査が必要と考えられる場合は、専門機関をご紹介させていただくことがございます。
咽頭炎
咽頭炎とは、風邪のウイルスや細菌などの感染によって、喉の奥の「咽頭(いんとう)」という部分に炎症が起こる状態のことです。多くの場合、発熱や鼻水、咳などの風邪の症状の一つとして現れます。診察では、喉の奥が赤く腫れていたり、炎症を起こしている様子が確認できることがあります。
咽頭がん
咽頭がんとは、のどの奥に位置する「咽頭」と呼ばれる部分に発生するがん(悪性腫瘍)です。咽頭は、鼻の奥から喉まで続く空気と食べ物の通り道で、「上咽頭」「中咽頭」「下咽頭」の3つに分けられます。咽頭がんはこのどこにできるかによって、症状や治療の内容が変わってきます。初期の段階ではほとんど症状が現れないこともありますが、のどに異物感がある、つかえたように感じる、食べ物を飲み込みにくい、声がかすれる、耳の奥に響くような痛み(放散痛)などが出ることがあります。進行すると、出血や呼吸がしにくくなるといった症状を伴うこともあります。咽頭がんの発症に関連する主なリスク要因としては、長期的な喫煙や過度の飲酒、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が知られています。とくにこれらの要因に長年さらされている方は注意が必要です。違和感や声の変化などの症状が1ヵ月以上続く場合や、徐々に悪化していると感じるときは、早期発見・早期治療のためにも、耳鼻咽喉科での診察を受けることが勧められます。
喉頭炎
喉頭炎とは、喉の奥にある「喉頭(こうとう)」という部分に炎症が起こっている状態です。喉頭は、咽頭の下に位置し、気管と咽頭の間にあります。喉頭には「喉頭蓋(こうとうがい)」と呼ばれるふたのような構造があり、これが呼吸や飲食の際に動くことで、空気は気管へ、食べ物や飲み物は食道へと正しく振り分けられています。また、喉頭には声を出すための「声門」があり、声の調整に関わっています。そのため、喉頭に炎症が起きると、声がかすれる(嗄声)、咳が出る、喉の痛みや発熱などの症状があらわれることがあります。特に「喉頭蓋」に炎症が生じた場合は、空気の通り道が急に狭くなり、呼吸困難や、重症の場合は窒息状態に陥るおそれがあるため、注意が必要です。喉の強い痛みや息苦しさを感じた場合には、早急に医療機関を受診することが重要です。
喉頭がん
喉頭がんとは、喉にある「喉頭」と呼ばれる器官に発生する悪性腫瘍です。喉頭は声帯を含み、声を出すほか、呼吸や食事の際に空気と食べ物の通り道を正しく振り分ける機能を持っています。喉頭がんはこの部位にできるがんで、発生する位置によって「声門がん(声帯に発生するがん)」「声門上がん」「声門下がん」に分類されます。初期の症状としては声のかすれがよくみられ、のどの違和感、飲み込みづらさや咳、血の混じった痰などが現れることもあります。進行すると、呼吸がしにくくなったり、のどの痛みが強くなったりする場合があります。主な危険因子としては長年の喫煙と過度な飲酒が挙げられ、特に喫煙習慣のある方は注意が必要です。声の異常やのどの不調が2週間以上続く場合には、がんの早期発見のためにも耳鼻咽喉科での受診と検査が推奨されます。
急性扁桃炎
急性扁桃炎とは、喉の奥の左右にある「扁桃(へんとう)」と呼ばれるリンパ組織に、ウイルスや細菌が感染して炎症が生じる状態を指します。炎症を起こした扁桃は赤く腫れ、場合によっては白い斑点(膿のかたまり)が確認されることもあります。主な症状には、つばを飲み込む際の強い喉の痛みや、高熱などが挙げられます。また、疲労やストレス、寒さなどによって免疫力が低下しているときに発症しやすいため、日ごろの体調管理にも気を配ることが重要です。
扁桃肥大
扁桃肥大とは、喉の奥にある「口蓋扁桃(こうがいへんとう)」と呼ばれる組織が大きくなることで、呼吸がしづらくなったり、食べ物や飲み物を飲み込みにくくなったりする症状があらわれる状態を指します。一般的に、扁桃肥大は3歳頃から見られるようになり、7歳頃に最も大きくなり、その後は10歳頃を過ぎると徐々に小さくなる傾向があります。肥大した扁桃によっていびきが目立つようになったり、睡眠中に呼吸が止まる(睡眠時無呼吸)などの睡眠障害を引き起こすこともあります。こうした影響が日常生活に支障をきたす場合や、睡眠への影響が大きい場合には、手術によって扁桃を摘出する治療が検討されることもあります。
アデノイド肥大
アデノイド肥大とは、鼻の奥と喉の間(上咽頭)にある「アデノイド」と呼ばれるリンパ組織が大きくなった状態を指します。アデノイドは、2歳頃から発達し始め、6歳前後で最も大きくなり、10歳頃には自然に小さくなっていくのが一般的な経過です。アデノイドが肥大すると、鼻づまりや口呼吸が目立つようになったり、中耳炎や副鼻腔炎を繰り返しやすくなったりすることがあります。また、呼吸がしづらくなることで、いびきや睡眠時無呼吸といった睡眠障害を引き起こすこともあります。これらの症状が日常生活に大きな影響を与えている場合や、感染が慢性化している場合には、アデノイドの切除手術が検討されることもあります。なお、アデノイド肥大と似た症状を引き起こすものに「扁桃肥大」がありますが、扁桃は喉の奥の左右にある組織で、主に嚥下障害や喉のつまり感、いびきの原因となることが多いです。両者は位置や影響する症状が異なるため、医師による診察と評価が重要です。
咽喉頭異常感症(自律神経失調症・抑うつ)
ストレスによって自律神経のバランスが崩れると、喉の詰まり感や違和感、圧迫されるような感覚が現れることがあります。これは、交感神経の働きが過剰になることで、食道周辺の筋肉が緊張しすぎてしまうことが原因と考えられています。この状態では、喉に何かが詰まっているような感覚が続く一方で、検査をしても明らかな炎症や腫瘍などの器質的異常は見つからないという特徴があり、「咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)」と呼ばれています。治療においては、まずストレスや不安の要因を見つけて取り除くことが重要ですが、すぐに生活環境を変えるのが難しい場合も多いため、軽い抗不安薬や漢方薬を使用して症状をやわらげる方法が効果的なケースもあります。喉の違和感が続いてつらいと感じる方は、無理をせず、早めにご相談ください。
甲状腺の疾患
バセドウ病
バセドウ病とは、甲状腺ホルモンが必要以上に分泌されることによって、体の代謝が過剰に活発になってしまう自己免疫性の疾患です。甲状腺ホルモンは全身の代謝や体温調節に関わる重要なホルモンですが、分泌が多すぎると臓器に負担がかかり、さまざまな症状が現れます。代表的な症状には、動悸(心臓がドキドキする)、体重減少、手の震え、暑がり、神経過敏(イライラ)、不眠などがあります。また、眼球が前に突出する「眼症(甲状腺眼症)」がみられることもあります。バセドウ病の原因ははっきりとはわかっていませんが、ウイルス感染や強いストレス、妊娠・出産などの体調変化をきっかけに免疫バランスが崩れて発症すると考えられています。20~50代の女性に多く発症するのが特徴で、甲状腺の疾患の中でも特に若い女性に発症が多いです。治療は、まず抗甲状腺薬による薬物療法から始めるのが一般的で、多くの方はこの治療でホルモンのバランスが整います。ただし、治療を中断すると再発することもあるため、定期的な血液検査などによる経過観察が重要です。薬が効きにくい場合や再発を繰り返す場合には、放射性ヨウ素治療や甲状腺の一部または全部を切除する手術が検討されることもあります。
亜急性甲状腺炎
亜急性甲状腺炎とは、甲状腺に一時的で強い炎症が起こり、甲状腺の組織が破壊される疾患です。この炎症は、風邪の後などにみられるウイルス感染(とくにコクサッキーウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスなど)に対する免疫反応が誘因となって発症すると考えられています。主な症状としては、発熱に加え、痛みを伴う甲状腺の腫れがみられます。炎症によって壊れた甲状腺組織から、蓄えられていた甲状腺ホルモンが一気に血液中へ放出されるため、一時的に動悸、手の震え、発汗の増加といった、バセドウ病に似た症状が現れることがあります。治療は、ステロイド薬や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を用いた内服治療が基本ですが、症状が強い場合には入院して点滴治療が必要になることもあります。この疾患は、症状が強く出るものの、多くの方は数か月以内に自然に回復していきます。ただし、まれに甲状腺機能低下症が後遺症として残る場合があり、経過を追っていくことが重要です。また、再発する可能性もあるため、医師の指示がないまま治療を自己中断しないよう注意が必要です。
(慢性甲状腺炎)
橋本病とは、甲状腺に慢性的な炎症が生じる疾患で、「慢性甲状腺炎」とも呼ばれています。橋本病は、自己免疫の異常によって、体の免疫システムが誤って自分自身の甲状腺を攻撃することで発症すると考えられていますが、なぜこのような免疫反応が起きるのかは、いまだ明確には解明されていません。この疾患は、30~50代の女性に特に多くみられるのが特徴です。橋本病の経過中に、甲状腺ホルモンの分泌が徐々に低下し、「甲状腺機能低下症」へ進行することがあります。この状態に至る割合は、患者全体のおよそ20~50%程度と報告されています。甲状腺ホルモンが不足すると、体全体の代謝が落ちるため、喉の違和感に加え、無気力感、疲れやすさ、むくみ、寒がり、体重の増加、便秘といった症状が現れることがあります。人によっては、白髪が急に増えたと感じる場合もあります。治療が必要と判断された場合には、不足している甲状腺ホルモンを補う目的で、ホルモン剤(レボチロキシンなど)を内服する治療が行われます。
甲状腺腫瘍(甲状腺のしこり)
甲状腺腫瘍とは、甲状腺にできるしこり(腫瘤)の総称で、良性のものと悪性のもの(がん)があります。多くの場合、初期には自覚症状がほとんどなく、指で触れて気づいたり、首を前に曲げたときの違和感として感じられる程度です。健康診断などで医師の触診によって甲状腺のしこりが見つかる割合は約1%前後とされていますが、超音波検査(エコー)を行うと、10~30%の方に甲状腺の結節が見つかると報告されています。そのうち、1~3%程度が悪性腫瘍であると考えられています。良性のしこりで症状がない場合には、特別な治療は行わず、定期的な経過観察を行うのが一般的です。ただし、しこりが大きくなって首の圧迫感や違和感が強くなる場合や、悪性の可能性が否定できない場合には、外科的切除(手術)が検討されます。また、最初に良性と診断されたしこりであっても、後に悪性と判明することがまれにあるため、超音波検査や診察による定期的なフォローアップが重要です。
検査・治療
のどの詰まり感や異物感、圧迫感などがある場合、その原因はさまざまで、消化器系の疾患、耳鼻咽喉科領域の疾患、自律神経の乱れ、甲状腺の異常などが関係していることがあります。当院ではまず、丁寧な問診を通じて症状の内容や経過、全身の状態を詳しくお伺いし、必要に応じて、触診・採血・ホルモン検査・超音波検査などを組み合わせて、原因の特定を進めていきます。また、自律神経の不調や不眠などを伴う場合には、それらに対する対応や治療もあわせて行います。診察の結果、甲状腺疾患やその他の専門的な診療が必要と判断された場合には、適切な医療機関へご紹介いたします。のどの違和感は、外見からは判断しづらく、原因も多岐にわたるため、気になる症状が続く場合には早めのご相談をおすすめします。
よくある質問
のどに違和感があるとき、どうすればよいですか?
まずは耳鼻咽喉科または内科を受診し、必要に応じて血液検査や画像検査などで原因を調べます。違和感が1週間以上続く、または声のかすれ、飲み込みにくさなどを伴う場合は、早期に医療機関へご相談ください。
喉の違和感はどれくらいで治りますか?
炎症や一時的な刺激が原因の場合は、数日~1週間程度で改善することが多いですが、逆流性食道炎や自律神経の影響によるものは、回復までに時間がかかることがあります。長引く場合は精密検査が必要です。
喉に何かが張り付いている・詰まっているように感じるのはなぜですか?
張り付き感や詰まり感は、咽喉頭逆流症、慢性的なのどの炎症、咽喉頭異常感症、甲状腺の腫れ、心因性の緊張などが関係している場合があります。甲状腺疾患では、腫れが気道や食道を圧迫することで詰まり感が出ることがありますが、それ以外の疾患の可能性もあるため、診察と検査が必要です。
喉の違和感はストレスが原因ですか?
ストレスや自律神経の乱れが関係して、喉に異物感を感じる「咽喉頭異常感症」がみられることがありますが、同じような症状は他の疾患(胃酸逆流、甲状腺、慢性炎症など)でも起こります。検査で明らかな異常がない場合も、症状が続く場合は専門医に相談しましょう。
喉の違和感を和らげたり治したりする方法はありますか?
胃酸逆流が原因の場合は制酸薬、炎症が原因の場合は抗炎症薬が使用されます。ストレスが関係している場合は、生活習慣の見直しや漢方・安定剤が効果的なこともあります。まずは原因を正確に把握することが重要です。
喉に違和感があるときは何科を受診すべきですか?
最初は耳鼻咽喉科または内科を受診してください。症状や検査結果により、消化器内科(逆流性食道炎)や内分泌内科(甲状腺疾患)に紹介されることがあります。
喉の違和感がインフルエンザで起こることはありますか?
インフルエンザでものどの痛みがみられることはありますが、「異物が張り付いているような感覚」が長引く場合は、他の疾患(逆流性食道炎や心因性の異常感など)の可能性が高いため、注意が必要です。
喉にポリープができた場合の症状は?
声のかすれや出しづらさ、喉の異物感などがあり、特に声をよく使う方に多くみられます。症状がある場合は耳鼻咽喉科での診察をおすすめします。
喉の違和感が長引く場合、どのような病気の可能性がありますか?
1ヵ月以上続く場合は、慢性炎症、咽頭・喉頭のがん、逆流性食道炎、甲状腺疾患、咽喉頭異常感症などの可能性があります。がんの初期では痛みを伴わないこともあるため、症状が長引くときは精密検査を受けましょう。
咽頭がんの症状や見つかるきっかけにはどのようなものがありますか?
初期症状としては、のどの痛み、飲み込みにくさ、声のかすれ、痰に血が混じる、耳の奥への痛みなどがみられます。これらの症状が続き、医療機関での検査によって発見されるケースが多いです。男女差はほとんどありませんが、女性でも同様の症状が出ます。
がんの前兆として現れる喉の症状はありますか?
咽頭がん・喉頭がんなどでは、長期間続くのどの詰まり感、声のかすれ、飲み込みづらさ、耳への痛み、痰に血が混じるなどが前兆となることがあります。初期は痛みがないこともあるため、違和感が続く場合は早めの受診が重要です。