更年期障害対策で食べてはいけないものはある?注意したいNG食べ物とおすすめ栄養素を解説
卵巣機能の低下によるホルモンバランスの変化が原因となる更年期障害では、その症状の強弱に食事が一部関係していることが知られています。
つらい更年期症状をやわらげるために、食べてはいけないとされるものには何があるでしょうか?
この記事では、更年期症状に関係すると言われる食べ物や栄養素について、本当に食べてはいけないかどうかを解説します。
そのほか、意識して摂りたい栄養素、普段の食事で心がけたいポイントやメニュー例、おすすめレシピも紹介しますので、是非参考にしてくださいね。
更年期障害とは?
更年期障害とは、更年期症状の特に重いもので、その症状は多岐にわたります。
発症原因やリスク要因は個人の体質だけでなく、環境要因も関わることが知られています。
更年期障害について、概要を整理していきましょう。
更年期のホルモンバランスの変化による体調不良
まず更年期とは、閉経を挟んだ約10年間(閉経前後の5年間ずつ)を指します。
閉経は卵巣機能が徐々に低下することにより、月経が永久に停止することを指します。
平均的には50歳前後とされていますが、個人差も大きく、40代前半から50代後半と幅があります。
更年期は卵巣機能の低下により、ホルモンバランスが大きく変化するため、様々な体調不良が起こることが知られています。
更年期に現れる、他の病気が原因ではない心身の不調を「更年期症状」といいます。
さらに、特に症状が重く、日常生活に支障をきたした状態を「更年期障害」といいます。
更年期障害の原因・リスク要因
更年期障害の主な原因は女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に変動しながら低下していくことです。
それに加え、加齢による体の変化、性格も含む精神・心理的な要因、家庭や職場などのストレスなど社会的な要因が組み合わさって更年期障害を発症すると言われています。
更年期障害の症状
更年期障害では、エストロゲンの急激な変動に起因する様々な症状が見られます。
■更年期障害で見られる主な症状
- 血管運動神経症状…顔のほてり、ホットフラッシュ(のぼせ、発汗など)
- 身体症状…疲れやすい、めまい、動悸、頭痛、肩こり、腰痛、関節痛、足腰の冷えなど
- 精神症状…気分の落ち込み、イライラ、不眠、不安感など
ただし、これらの症状が見られたとしても、必ずしも更年期症状であるとは限りません。
似た症状を示す病気には、うつ病、甲状腺機能異常、貧血などがあり、区別することが必要です。
更年期に起こる体調不良はすべて更年期症状と安易に自己判断せず、医師に相談することが大切です。
更年期障害を緩和するには?
更年期障害は卵巣機能の低下に加え、加齢に伴う体の変化、精神的・心理的な要因、家庭や職場など社会的ストレスが組み合わさって起こると考えられています。
そのため、更年期障害の緩和には、低下する卵巣機能を直接補うことだけでなく、更年期障害に関係する生活習慣の改善や心理療法など、様々な角度からのサポートが行われます。
生活習慣の改善
閉経後はホルモンバランスの変化により、生活習慣病や骨粗鬆症などのリスクが高まることが知られています。
健康を長く維持するためには、日頃の生活習慣を見直すことが大切です。
また、もともと肥満傾向にある方では、生活習慣の改善は更年期症状の改善にも役立つことが知られています。
具体的には、食事内容の見直し、運動習慣を心がけること、睡眠時間を十分に確保することなどが生活習慣の改善の基本となります。
心理療法
更年期障害の発症には、もともとの性格の傾向、職場や家庭での人間関係やストレスなどの心理社会的な要因が関わることが知られています。
そのため、これらのストレスを緩和するために、カウンセリングや認知行動療法などの心理療法が行われることがあります。
認知行動療法により、ホットフラッシュなどの血管運動神経症状が改善することが報告されており、身体的な症状にも効果が期待できます。
薬物療法
生活習慣の改善や心理療法で症状が改善しない場合、薬を用いた治療が選択肢となります。
薬物療法にはホルモン補充療法(HRT)や漢方薬があり、それぞれのアプローチで症状の緩和を図ります。
ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法では、更年期に分泌量が不安定になるエストロゲンを補うことでホットフラッシュ(ほてり、のぼせ、発汗)などの症状を緩和します。
また、更年期以降の骨粗鬆症や心血管疾患の予防にも効果があることが知られています。
これまでの病気の既往や現在の子宮の有無などにより実施の可否や補充するホルモンの内容が異なります。
また、子宮出血や、乳房の張りや痛み、片頭痛などのマイナートラブルが生じることがあったり、特定の疾患リスクが高まったりする可能性もあるため、医師とよく相談することが重要です。
漢方薬
漢方薬は「不定愁訴」と言われる多彩で変化する自覚症状がある場合に取り入れられます。
体力の強弱などの体質、貧血や冷え、症状に合わせて当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸などの漢方薬が処方されることが多くなっています。
漢方薬は穏やかな作用が期待されますが、副作用の可能性もあるため、医師や薬剤師とよく相談しながら取り入れることが大切です。
更年期に食べてはいけないものはある?
更年期障害の症状を和らげ、閉経後の健康を保つには、食事を含む生活習慣の見直しが大切です。
俗に、更年期に「食べてはいけない」とされる食べ物には、次のようなものが挙げられます。
- 加工食品、インスタント食品
- 糖質、砂糖
- 香辛料などの刺激物
- アルコール、カフェイン
- 熱すぎる、冷たすぎる食べ物・飲み物
とはいえ、これらをすべて避けようとすると、日々の食事に大きな負担がかかります。
そのため、これらの食品については、なぜ注意が必要なのかを理解し、量と摂り方に気を配ることが重要です。
俗に更年期に避けるべきと言われる食品と、上手な付き合い方を解説します。
「絶対に食べてはいけないもの」は無い
更年期の食事において、医学的に「絶対に口にしてはいけないもの」は基本的にありません。
更年期障害の主な原因は卵巣機能の低下であり、特定の食品が更年期症状を直接引き起こすわけではなく、国内外の診療ガイドラインでも、摂取制限が必要とされる特定の食品はありません。
一方で、特定の食品が更年期症状を誘発したり、症状の強さと関連することを示唆する海外の研究もあり、摂り方に注意が必要です。
冷たすぎる・熱すぎるものは避けるべき?
冷たすぎる・熱すぎる飲食物は体調に合わせて控えるのがよいでしょう。
更年期におけるホットフラッシュ(ほてり、のぼせ、発汗)はエストロゲンの低下によって体温調節が不安定になることで起こります。
特に、熱すぎる飲み物や食べ物はホットフラッシュ(ほてり、のぼせ、発汗など)を誘発する場合があります。
一方、冷たい食べ物や氷入りの飲料などは、冷え症状が出やすい方には体を冷やしすぎる原因となることもあるため、寒い時期や冷えが気になる方は注意しましょう。
暑い日は冷たいもの、寒い日は熱々の料理を食べたくなりますが、症状がある方は体調に応じて、量や温度を調節しながら取り入れることが大切です。
刺激物は避けるべき?
香辛料などの刺激の強い食べ物は、ホットフラッシュの症状を誘発しやすいため、注意が必要です。
エストロゲンの低下は体温調整を不安定にし、熱さや寒さも感じやすくなるため、わずかな温度変化や刺激でも体が過剰に反応しやすくなっています。
香辛料、特に唐辛子に含まれるカプサイシンは体内の温感受容体(温度センサー)を刺激して脳に「熱い」と感じさせて放熱反応を促すことがあります。
その結果、ホットフラッシュなどの症状が誘発されやすくなると考えられています。
ホットフラッシュの症状がある場合には、唐辛子やスパイスの効いた料理など、辛いものや刺激物を摂りすぎないようにし、体調をよくみながら調節することが大切です。
アルコール・カフェインは避けるべき?
アルコールやカフェインは、ホットフラッシュを誘発する可能性があるため、症状が気になる方は控えめにしましょう。
アルコールは血管拡張作用により皮膚の血流を増やし、体温調節に影響してホットフラッシュを起こしやすくします。
また、カフェインは交感神経を刺激し、自律神経の乱れによって体温調節を不安定にする要因となります。
さらに、カフェイン摂取量と更年期症状の重さが関連すると報告されており、コーヒーやエナジードリンクなどの飲みすぎには注意が必要です。
■カフェインの摂取上限の目安…健康な成人で1日あたり400mgまで
(国際的な目安…カフェインに対する感受性は個人差があります)
- コーヒーの場合…1日3~4杯程度までが適量の目安(1杯150mlでカフェインが90mg )
- お茶、エナジードリンク、眠気覚ましドリンクなどの摂取にも注意
一方、アルコールは更年期症状の誘因となるほか、過剰摂取は肥満や生活習慣病のリスクを高めるため、閉経後の生活習慣病予防のためにも適量を守ることが大切です。
■アルコールの摂取上限の目安…
1日あたり純アルコールで20gまで(厚生労働省「節度ある適度な飲酒」)
(女性や高齢者、体質的にお酒に弱い方はさらに控えることが望ましい)
- アルコール度数5%のビールの場合…約500mlに相当。
- 週2回はお酒を飲まない「休肝日」をつくりましょう。
糖質・砂糖は避けるべき?
糖質(≒炭水化物)は、米などに含まれるでんぷんのほか、砂糖などの糖類を含み、重要なエネルギー源となります。
ただし、糖類は、摂りすぎると食事のバランスが崩れやすく、過剰摂取に注意が必要です。
一方、糖質は主要なエネルギー源として重要であるため、過度に制限せず適量摂取を意識しましょう。
糖類は更年期症状の強さとの関連が報告されていますが、明確な因果関係やメカニズムは判明しておらず、「絶対に避けるべき」とまでは言えません。
とはいえ、糖類を多用したお菓子やジュースは摂取カロリーが増えやすく、肥満や脂質異常症(高トリグリセライド血症)のリスクを高めます。
特に閉経後はホルモンの影響で生活習慣病のリスクがあがるため、砂糖類を多く含む食品は控えめにしましょう。
■砂糖類の多い食品の考え方
- 過剰摂取による栄養バランスの乱れに注意
- 菓子類、ジュース類、菓子パンなどは量を決めると栄養バランスが乱れにくくなる
…1日あたり200kcalまで、肥満の方は100kcalまで など
加工食品・インスタント食品は避けるべき?
加工食品やインスタント食品は、過剰に摂ると栄養バランスを崩しやすいため注意が必要です。
海外の研究で、「高度に加工された食品(超加工食品)」の摂取量が更年期症状の強さと関連する可能性が示されています。
ただし、加工食品・超加工食品の明確な定義はなく、加工方法や添加物よりも、その栄養成分(高カロリー・高脂肪・高糖質・高塩分)に注目すべきです。
一般的に、これらの食品は手作りと比較してカロリー・脂質・糖質・塩分が多くなりがちで、食べ過ぎると栄養バランスが偏りやすくなります。
閉経後は女性ホルモンの低下により生活習慣病リスクが上がるため、生活習慣病リスクと関連するカロリー・脂肪・糖質・塩分は摂りすぎないよう注意が必要です。
とはいえ、すべての加工食品に問題があるわけではありません。加工度にこだわりすぎず、食事全体のバランスを整えることが大切です。
更年期障害改善のために心がけたい栄養素とは?
更年期に控えたい食べ物がある一方で、更年期症状をやわらげたり、閉経後の生活習慣病のリスクを抑えるために、積極的に取り入れたい栄養素や食事内容もあります。
もちろん、食事だけで更年期障害を根本から治すことはできませんが、日々の食生活の中で無理無く取り入れてみるとよいでしょう。
基本は「バランスの良い食事」
更年期の食事では、まず全体のバランスを整えることが大切です。
産婦人科の診療ガイドラインでも、更年期障害への対応として「食事を含む生活習慣の改善」がありますが、特定の栄養素や食品を推奨するものではありません。
特定の栄養素や食品に着目するのではなく、食事全体を整えることが重要です。
栄養バランスを考える際は、食事を次の6つのカテゴリーに分けて偏りなく摂るのがおすすめです。
■食事の6つのカテゴリー
- 主食…米、パン、麺類(炭水化物)
- 主菜…肉、魚、卵、大豆製品(たんぱく質)
- 副菜…野菜、きのこ、海藻(食物繊維、ビタミン、ミネラル)
- 乳製品…牛乳、ヨーグルトなど(カルシウム)
- 果物…果物類(食物繊維、ビタミン)
- 菓子、嗜好飲料…お菓子類、ジュース類、酒類
食事のバランスを整えるには、以下のような工夫が役立ちます。
■食事のバランスを整えるコツ
- 1日3食で主食・主菜・副菜を揃える
- 1日のどこかで乳製品、果物をとる
- 菓子・嗜好飲料は1日200kcal以内を目安に楽しむ範囲に留める
具体的な量に関しては、年齢・体格・活動量などによって異なるため、医師や管理栄養士に相談するのがおすすめです。
カルシウムとビタミンD
閉経後の骨粗鬆症予防のために、カルシウムとビタミンDを意識しましょう。
カルシウムは骨の材料、ビタミンDはカルシウムの吸収と骨への沈着を促進する働きがあります。
閉経後はエストロゲンの減少により骨の代謝が活発になり、骨密度が低下しやすくなります。
そのため、骨粗鬆症の予防として、カルシウムとビタミンDの十分な摂取が推奨されています。
■カルシウム及びビタミンDの摂取基準値と摂取状況
日本人の食事摂取基準2025年版(30~74歳) | 摂取中央値(20歳以上) | |
カルシウム | 650mg(推奨量) | 436mg |
ビタミンD | 9.0μg(目安量) | 2.9μg |
出典:日本人の食事摂取基準2025年版、令和5年国民健康・栄養調査
どちらも、摂取中央値は基準値に届いておらず、日本人の平均的な食事では不足しやすい状況です。
以下のような食材を積極的に取り入れ、摂取量の確保を心がけましょう。
■カルシウムの多い食品
- 牛乳・乳製品
- 小魚
- 大豆製品
- 一部の緑黄色野菜(モロヘイヤ、小松菜、水菜など)
■ビタミンDの多い食品
- 魚類(いわし、サケ、サンマなど)
- きのこ(まいたけ、きくらげ)
このほか、定期的な運動や十分な日光浴も骨の健康維持に役立ちます。
反対に、喫煙や過度の飲酒は控えましょう。
また、必要に応じて骨密度検査を受け、骨密度をチェックすることもおすすめです。
大豆イソフラボン・エクオール
大豆イソフラボンを含む食品は、更年期のホットフラッシュ(ほてり)などの症状を和らげる可能性があります。
大豆イソフラボンは女性ホルモン(エストロゲン)と似た構造を持つ「植物エストロゲン」の一種で、減少する女性ホルモンの作用を一部補うことが期待されています。
研究によってばらつきはあるものの、大豆イソフラボンや大豆の摂取がホットフラッシュの頻度を軽減するという報告もあります。
また、大豆製品は生活習慣病の予防にも有用です。
植物性食品のためコレステロールを含まず、動物性食品より飽和脂肪酸の割合が少ないのが特長です。
■大豆製品の例
- 蒸し大豆
- 豆腐
- 納豆
- 大豆ミート
一方で、サプリメント等での過剰摂取には注意が必要です。
厚生労働省は特定保健用食品などで食事に上乗せして摂取する大豆イソフラボン(アグリコン換算)を1日30mgまでを目安とするよう示しています。
これは、一部で乳がんや子宮内膜増殖症との関係が指摘されているためです。
豆腐や納豆、豆乳など通常の食品からの摂取は安全とされていますが、サプリメントのほか、強化食品やプロテインなどは摂取量に注意が必要です。
また、「エクオール」は、イソフラボンの一部が腸内細菌により変化した成分で、より作用が強いとされていますので、同様にサプリメント等からの摂取には注意しましょう。
食物繊維
食物繊維を摂れる食材を積極的に取り入れましょう。
海外の研究で、野菜や全粒穀物の摂取量が多いと、心理症状や睡眠障害、ホットフラッシュなどの更年期症状を弱める可能性が報告されています。
また、食物繊維は生活習慣病のリスクを下げる栄養素のひとつです。
更年期以降はホルモンの変化により生活習慣病リスクが上がるため、血糖値や血中コレステロールの管理が重要です。
食物繊維摂取量を増やすことで血糖値や血中コレステロール値を下げる作用が期待でき、将来にわたっての健康維持にも役立ちます。
■食物繊維が豊富な食品
- 野菜
- 海藻
- きのこ類
- 精製度の低い穀物
(精白玄米、全粒粉、小麦、押し麦、もち麦、オートミール、ライ麦、雑穀など)
毎日の食事で野菜・海藻・きのこ類をしっかり確保し、ごはん・パン・麺などの主食で精製度の低い穀物を選ぶのがおすすめです。
ビタミンE
ビタミンEは必須栄養素の一つで、更年期においてはホットフラッシュの軽減に関わる可能性が示唆されている栄養素です。
ただし、実際の効果はまだはっきりと分かっていません。
また、現在の日本人の平均的な食事でも十分な量を摂取していると考えられているため、意識的に摂取量を増やす必要はないとされています。
■ビタミンEの多い食品
- 植物油
- ナッツ類
- 魚類
- 緑黄色野菜
とはいえ、これらの食品にこだわりすぎず、バランスの取れた食事の中で無理なく取り入れていくとよいでしょう。
オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸を適切に摂ることで、生活習慣病のリスクの低下や更年期症状の緩和に役立つ可能性があります。
オメガ3脂肪酸とは、魚の脂やアマニ油などの植物油に含まれる多価不飽和脂肪酸の一種です。
オメガ3を含む多価不飽和脂肪酸には血中LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を下げる作用があり、脂質異常症などの予防に役立つ栄養素とされています。
また、オメガ3脂肪酸とビタミンEをあわせてとることで、ホットフラッシュの強度が軽減したという報告がありますが、単独での効果は明確ではなく、今後の研究が待たれます。
生活習慣病予防・更年期症状緩和のために有用な成分である一方、脂質の一部であり、過剰摂取はカロリーオーバーにつながります。
過剰摂取を防ぐため、減らしたい飽和脂肪酸(肉の脂身、乳脂肪など)と置き換えるイメージで摂ることが大切です。
更年期対策のための具体的な食事のポイント
これまでに紹介した食べ物や栄養素について、普段の食事ではどのように取り入れるのが良いのでしょうか?
実際の食事を想定し、上手な取り入れ方を紹介します。
更年期世代の1日の食事スケジュール例
食事は原則として1日3食、間食は1回程度にするとよいでしょう。
朝、昼、夜、間食の例を紹介しますので、組み合わせの参考にしてくださいね。
朝食
- 主食…ライ麦入りトースト
- 主菜…目玉焼き
- 副菜…野菜スープ(レトルト)
- 乳製品…ヨーグルト
忙しい朝は手作りにこだわらず、簡単に用意できるものがオススメです。
市販品を活用すると食事の負担を減らせるので、常備しておくと便利です。
普段の食パンもライ麦入りや全粒粉入りを選ぶと、食物繊維の摂取を増やせます。
朝食は乳製品を取り入れやすいタイミングでもありますので、カルシウム補給のため意識して摂りましょう。
昼食
- 主食・主菜…肉豆腐どんぶり(大盛りは避ける)
- 副菜…春雨サラダ、わかめスープ
昼食は外食という方も多いのではないでしょうか?
外食に多い「丼もの」は、主食と主菜を兼ねるものと考えましょう。
大豆製品は、植物性の主菜となり、また大豆イソフラボンの摂取源としても有用です。
昼食では副菜をしっかり摂ると、カロリーを抑えつつも満足感が得られやすくなります。
夕食
- 主食…雑穀ごはん
- 主菜…鯖の塩焼き
- 副菜…ほうれん草の胡麻和え、舞茸の味噌汁
夕食では、朝や昼よりも「よく噛んで食べる」ことを意識しましょう。
雑穀ごはんにすると噛み応えも出て、食物繊維の摂取量も増やせます。
サバなどの青魚はオメガ3脂肪酸の、舞茸はビタミンDの代表的な摂取源ですので、それぞれ定期的に取り入れたい食材です。
間食
- 果物…カットフルーツ
- 乳製品…チーズ
昼食と夕食、夕食と就寝までなどの間隔が長くなるときは、間食を入れるのもおすすめです。
お菓子ではなく果物を選ぶと、糖類も抑えられ、栄養バランスも整います。
また、不足しやすいカルシウム補給に個包装のチーズ、ビタミンEや食物繊維が豊富なナッツ類もおすすめです。
外食時の注意点とメニュー選び
外食では家庭での食事と比較して糖質や脂質に偏りやすく、カロリー、塩分、香辛料も多くなりやすい傾向があります。
■外食のメニュー選びのポイント
- 定食メニューを選ぶ(主食・主菜・副菜を揃える)
- 麺類の汁は残す
- 肉より魚、揚げ物より焼き・煮物・蒸し物を選ぶ
- 野菜の多いメニューを選ぶ
- 優しい味つけを選ぶ
- 辛いものは避ける(ホットフラッシュがある場合)
- ごはんの大盛り、おかわりを避ける
- ドリンクは水やお茶などゼロカロリーのものにする
すべての条件を毎回守る必要はありませんが、できる範囲で意識することが大切です。
手軽に作れる更年期対策レシピ「厚揚げと舞茸の中華風炒め」
材料(2人分)
- 厚揚げ…小2枚(240g)
- 舞茸…1パック(100g)
- 小松菜…1束(200g)
- しょうが(みじんぎり)…小さじ1(4g)
- ごま油…小さじ2(8g)
- 醤油…小さじ2(12g)
- 酒…大さじ2(30g)
- オイスターソース…大さじ2(38g)
作り方
- 厚揚げは1口大に切る。舞茸は石づきを取ってほぐす。小松菜は根本を切って5cm幅に切る。
- フライパンにごま油、すりおろし生姜を入れて熱して香りを出す。
- 厚揚げと舞茸を加え、焼きめがついたら小松菜を加えて炒める。
- 小松菜に火が通ったら醤油、酒、オイスターソースを加えてさっと炒め合わせる。
栄養価とコメント(1人分)
- カロリー…269kcal
- たんぱく質…17.3g
- 脂質…18.1g
- 炭水化物…10.5g
- カルシウム…470mg
- ビタミンD…2.5μg
- 食塩相当量…3.4g
更年期に意識したい栄養素が摂れるレシピです。
カルシウム豊富な厚揚げ、小松菜に、ビタミンD豊富な舞茸を組み合わせました。
お肉を使っていないので、不飽和脂肪酸の割合が高いのもポイントです。
更年期障害改善のための生活習慣
更年期障害改善のためには食事以外の生活習慣も大切です。
運動、睡眠、ストレスについて、意識したいポイントを紹介します。
適度な運動
体調に配慮しつつ、適度な運動を取り入れましょう。
適度な運動を行うことで、閉経後の心血管疾患、骨粗鬆症のリスク低減に役立ちます。
また、肥満の方が体重を減らすことでほてりなどの更年期症状が軽減されたという報告もありますので、体重管理の一環として運動習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。
更年期の具体的な運動内容について、決まったものはありませんが、日常生活で運動量が少ない方、肥満の方は運動量を増やすことを意識するとよいでしょう。
運動のための時間をとるのが難しい場合には、以下のポイントを意識してみましょう。
■日常の身体活動を増やす工夫
- 座りっぱなしを避け、立ち上がるタイミングを作る
- 立って作業する時間を増やす
- 階段を使う
- バス停1つ分多く歩く
- 車ではなく自転車で移動する
- いつもより早いペースで歩く
無理のない範囲から始めて、少しずつ身体を動かす習慣を身につけていきましょう。
十分な睡眠
睡眠不足は自律神経のバランスを乱し、気分の不安定や体調不良の原因となります。
体調不良の予防のために、早寝を心がけ、睡眠時間を確保しましょう。
また、寝る前のアルコール摂取は眠気を誘う反面、睡眠の質を低下させることが知られていますので、避けたほうが安心です。
一方で、更年期症状のひとつとして不眠が現れる場合がありますので、気になる場合には医師に相談し、適切な対応を受けることが大切です。
ストレスの解消
更年期障害の発症にはストレスも一因となるため、ストレスをためない工夫も大切です。
ゆっくり休むことはもちろん、趣味を楽しむような活動的な休養もストレス解消に役立ちます。
自分一人で解消することが難しいストレス要因がある場合には、無理に抱え込まず、医師や信頼できる人に相談してみましょう。
更年期障害と食事についてよくある質問
更年期障害と食事について、よくある質問とその回答をまとめました。
更年期のホットフラッシュに効く食べ物はありますか?
ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)について、一部の食品・栄養成分が症状緩和に役立つ可能性が報告されています。
■ホットフラッシュの症状緩和に役立つ可能性が報告されている食品・栄養成分
- 大豆製品(大豆イソフラボン)
- 野菜、全粒穀物、未加工食品
- オメガ3脂肪酸とビタミンEの併用摂取
ただし、これらは薬ではなく、効果にも個人差があります。
現在も研究段階であることから、「症状を和らげる可能性がある食生活の一環」として取り入れるのがよいでしょう。
また、サプリメントなど、成分を濃縮した形態での摂取は過剰摂取に注意が必要です。
特に大豆イソフラボンの健康食品等での摂取はアグリコン換算で1日30mgまでとされていますので、なるべく通常の食品から、適量範囲で取り入れることが大切です。
更年期のイライラに効く食事はありますか?
「更年期のイライラ」といった精神症状について、特定の食品や栄養素が直接的な効果を示すという明確なデータは、現時点で報告されていません。
俗に、「カルシウムはイライラによい」とされますが、神経伝達に関与する栄養素ではあるものの、イライラした気分の緩和に役立つとする信頼性の高いデータはありません。
一方で、カルシウムは閉経後の骨粗鬆症のリスク予防のために重要な栄養素です。
日常の食事で不足しないよう、乳製品や小魚、緑黄色野菜類を取り入れるのがおすすめです。
更年期で太りやすくなった。食事はどうすべきですか?
無理な食事制限は避け、栄養バランスを保ちながら標準体重付近までの減量を目指しましょう。
更年期では様々な要因から肥満や生活習慣病のリスクが高まりますが、無理な減量は避けましょう。
極端な食事制限はリバウンドの原因となるほか、カルシウムなどの大切な栄養素が不足しやすくなり、将来の健康を脅かしかねません。
まず、お菓子類やお酒など余分なカロリー源を見直し、食事内容を整えていきましょう。
適度な運動を取り入れることも大切です。
自己判断がが難しい場合には、医師や管理栄養士に相談するのも有効です。
女性ホルモンを補うには何を食べればいいですか?
エストロゲンと似た作用を持つ大豆イソフラボンを含む大豆製品などが選択肢となります。
ただし、健康食品等での過剰摂取では悪影響が心配されているため、アグリコン換算で1日30mgまでの摂取にとどめましょう。
また、通常の食品であっても、大量摂取は食事の栄養バランスを乱し、体に悪影響を与える可能性があります。
更年期症状がつらい場合には、医療機関に相談し、症状に合わせてホルモン補充療法などの治療を受けることが大切です。
更年期にとるべきサプリメントはありますか?
更年期に「必ずとるべき」サプリメントはありません。
大豆イソフラボンやエクオールといった、女性ホルモンの作用を補う成分が有用な場合はあるものの、必ず効果が得られるわけではなく、必須のものではありません。
基本的にサプリメントは食品の一形態であり、医薬品ではないと考えましょう。
一方で、様々な理由から十分な食事摂取が難しい場合には、必須栄養素の補給にサプリメントが役立つ場合もあります。
サプリメントは体に必要なカロリーやたんぱく質、不足しやすいカルシウムや鉄分を補いたい場合に便利です。
自分に必要なサプリメントが何か迷ったときや、取り入れたいサプリメントがある場合には、医師や管理栄養士と相談するのがおすすめです。
まとめ
更年期障害ではその症状の悪化や緩和に関して、いくつかの食事内容や栄養素が関係することが知られているものの、「絶対的に食べてはいけないもの」はありません。
更年期症状を誘発する可能性のある食品を控えめにしたり、ホルモンバランスの変化に伴う代謝の変化に合わせて食事内容を整えたりすることは大切ですが、食事内容の過度な制限は負担が大きくなるため、無理のない範囲で意識しましょう。
一方で、更年期症状を緩和する作用が期待されている食品や栄養素もありますが、過度な期待は禁物です。
あくまでバランスの取れた食事を基本とし、不足しやすいカルシウムやビタミンDなどの栄養素を補うことを心がけましょう。
また、更年期には体質や症状のあらわれ方に個人差があるため、自分の体調に合った食生活を見つけることが大切です。
食事内容に悩んだ場合には、医師や管理栄養士に相談するのがよいでしょう。
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記事監修
院長 内田 智之
- 日暮里・三河島内科クリニック 院長
- 日本内科学会総合内科専門医
- 日本血液学会血液専門医
- 日本血液学会血液指導医
- ICLSディレクター
- がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修修了
- 難病指定医
管理栄養士 平井 しおり
2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。
現在は、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。